川上博士の発明

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 果たしてハツカネズミと同じような動きがみられるのだろうか……。  博士は期待と心配と興奮が入り混じった気持ちで、ウサギをじっと見つめていた。  小皿の液体を全て舐め切ったウサギは、再び隅のほうに移動し、体を丸め、そのまま動かなくなった。 「あれ……? 失敗だったのかな?」  博士の顔に不安の色が浮かぶ。  しかし、今度の実験でもウサギに少しずつ変化が見られた。  何かに興奮しているように息が荒くなり、目に輝きが戻ってきたのだ。  そしてハツカネズミと同じように、檻の中を元気よく跳ね回り始める。  博士はホッと安堵のため息をついた。 「ふふふ、間違いない。どうやら研究は成功したみたいだ」  もう動物で実験しなくても大丈夫だろう。  やっと自分で飲んでみる気になった博士は、フラスコに口をつけ、中身を一気に飲み干した。  飲んで二、三分ほどで体に変化が現れ始めた。  心臓の鼓動が速くなり、だんだんと体全体に力がみなぎってきたのだ。 「成功だ、大成功だ。体じゅうに気力と体力があふれてきたぞ。これで俺の寿命も百年ほど延びたことだろう」
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