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「おい、直也は強くねーんだから、一気に飲むなよ」
裕二に缶を奪われた。かわりにグラスに注いだ水を持ってきてくれる。
僕は意を決して口を開いた。
「昨日の合コンってどうだったの?」
「合コン? どうって飯食って酒飲んだだけだけど?」
「彼女はできなかったの?」
「そもそも数合わせで行っただけで、そんなの作るつもりねーし」
ホッと息を吐き出した。
裕二はジッと僕を見つめる。
「直也は俺のこと好きなの?」
ほろ酔いだったのに、裕二の発言で一気に酔いが覚めた。
この気持ちは一生、心の中に留めておく。決して表には出さない。だから子供の頃に言っていたように、笑顔を貼り付けて答える。
「裕二が好きだよ。幼馴染だからね。好きじゃなかったらこんなに長く一緒にいないでしょ」
「違う。そういう軽いのじゃなくて、俺と付き合いたいとかそんな好き」
「何言ってるの? そんなわけないでしょ」
冷や汗をかきながらも、なんとか笑顔を保つ。
「でもさ、たまに思うんだよ。直也は俺のこと好きなんだろうな、って」
「どうしてそう思うの?」
「そういう目で見てくるから」
相手に悟られるほど分かりやすいのか……。どうやって誤魔化そうか考えていると、裕二は首を反らして缶の中のお酒を飲み干した。
「今なら酒の勢いってことで、直也のこと抱ける気がする」
「……最低なこと言ってる自覚ある?」
あまり顔には出ていないけど、相当酔っているのかもしれない。
「酒の勢いってことにした方が楽だろ。直也にそういう目で見られて、こっちだって意識してんだから。今更直也を甘く優しく口説くなんて無理。お前もそうだろ?」
想像してみた。裕二にそっと手を握られ、身体を引き寄せられてキツく抱きしめられる。耳元で熱い吐息と共に、体が疼くような甘く低い声で愛を囁かれる。
自分の身体を抱いて身震いした。
「何を想像して、そんな反応したのか知らねーけど、失礼なやつだな」
「鳥肌が立った」
肌をさすれば、裕二が苦笑する。
「だからさ、酒の勢いでヤって、その延長で一緒にいるとかじゃないと、俺と直也が付き合うなんてないんじゃないか?」
「うーん、僕は付き合ってもいないのにそういった行為をすることに抵抗がある」
正直な気持ちを言えば、クソ真面目、と笑って裕二はもう一本缶を開けて酒を口にする。
「それなら俺と直也が付き合うにはどうしたらいい?」
「ちょっと待って! 裕二は僕を好きなの?」
目を丸くして顔を覗き込む。裕二は視線を逸らした。赤く染まった顔はお酒なのか、それとも別の要因なのか。別だと嬉しいんだけど。
「そうじゃなきゃお前の気持ちに気付いても、気付かぬふりしてる」
思わず顔が緩む。身を乗り出して裕二の頬を両手で挟んで、こちらを向かせた。
「僕は裕二が好き。裕二も言ってよ。お酒の勢いでいいからさ」
缶を置いて、裕二は片方の口角を上げる。
「直也が好きだ」
「体を繋げるより、僕を思ってくれることの方が嬉しい」
「寝て起きて忘れんなよ。忘れてたらお前の鳥肌で大根擦れるような口説き方してやるからな」
「それは嫌だな。絶対忘れないようにしなきゃ」
くすくす笑うと両頬を引っ張られる。
「そんなに期待されると今から口説きたくなるな」
裕二が僕の隣に座り直す。腕を掴まれて強引に引かれた。裕二の腕の中におさまる。目を白黒させていると熱い吐息を耳元に感じてゾクリとした。柔らかい唇が耳に触れる。
「直也が好きだ」
胸はかつてないほど大きな音を鳴らす。
耳を手で覆った。顔はきっと真っ赤だろう。
「あれ? 思ってたのと違うな。やめろって言われると思ったんだけど」
「……もっとして欲しい」
恥ずかしいから顔を隠すために首に擦り寄った。ギュッと抱きしめられる。裕二は大きなため息を吐いた。
「こんな子に育てた覚えねーんだけど」
間違いなく裕二で育っているよ。小さな頃からずっと好きなのだから。
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