幼馴染の口説き方

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 社会人になり、幼馴染の裕二は一人暮らしを始めた。通えない距離ではないが、通勤時間をなるべく減らしたいためだと言っていた。  家が隣だから大学生までは毎日のように顔を合わせていた。不在でも勝手に部屋に上がって待っていたし、裕二も僕のいない時に我が物顔をして部屋で出迎えてくれることはしょっちゅうだった。  僕は小さな頃から裕二が好き。いつも一緒にいたから、これから先もそうだと思っていたのに、今は連絡を取らなければ会うことができない。  ベッドに仰向けになり、裕二にメッセージを送る。 『今週の金曜日、仕事が終わったら遊びに行ってもいい?』  すぐに返信があり、動揺のあまりスマホを落としてしまう。自分の顔でスマホを受け止め、顔を押さえてのた打った。 『金曜日は合コンだから無理。土曜なら空いてる』  画面を消してみたり再起動してみたりと無駄なあがきをしても、メッセージ内容が変わるわけがない。  裕二が合コン? 今まで彼女が欲しいとかそういった話を聞いたことがなかった。  何もかもが普通の僕と違って、裕二はすっきりとした二重にスッと通った鼻筋。血色のいい薄い唇にシャープなフェイスラインととにかく顔が整っていた。少し言葉遣いはぶっきらぼうだけど、心根は優しいって知っている。  今まで何度も告白をされていたが、全部断っていた。一度聞いたことがあるが、その時は『恋愛に興味がない』と言っていた。でもそれを聞いたのは中学生の時。もうそれから何年も経っている。  行かないで、と僕が送れるわけなんてなかった。 『分かった。土曜日に行くね』  そう送ってスマホを充電器に繋ぐ。  瞼を下ろすけど、全然眠気なんてやってこない。  合コンで彼女ができた、と土曜日に報告される妄想ばかりが頭の中を占める。  やっぱり行くのやめようかな。でも行かなかったらメッセージで『彼女ができた』と報告されるかもしれない。どっちにしろ耐えられそうにない。
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