幼馴染の口説き方

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 悶々としながら土曜日を迎えた。  お昼過ぎに『つまみは作っておくから、酒を買ってきて』とメッセージが来たため、着替えて家を出る。裕二の手料理が食べられるなら行くしかない。  電車に乗って裕二の住むマンションの最寄駅で降りる。  途中にあるスーパーで酎ハイを買った。    マンションに着くと大きく深呼吸をして部屋番号を押す。裕二はいつも通り何も言わずにエントランスの扉を開けてくれた。気を使わない仲だからできるのだと思うと頬が緩む。  エレベーターを降りて部屋のドアハンドルを下げて引いた。僕が来る時は開けていてくれるから、中に入って鍵を閉める。  リビングに入ると裕二はすでにお酒を飲んでいた。つまみは自分で作ったものではなくチョコレート。 「直也が来るの遅いから、先に飲み始めた」  テーブルの上には缶が二つ。両方空いているから、一つは飲み切ったのだろう。 「時間は約束してなかったから、遅くなったわけじゃないでしょ」  テーブルを挟んで裕二の前に座る。  買ってきたお酒を渡すと、財布を出すから断った。裕二は料理を作ってくれたんだ。材料費も手間も掛かっている。 「夕飯には早いけど飯食う? それともつまみ?」 「おつまみだけじゃなくて、夕飯も作ってくれたの?」 「だって飲んで外に食いに行くの面倒だし」  裕二は上を向いて酎ハイを飲み干す。二つ目が空になった。  目をこちらに向けて、どうする? と再度聞いてくる。 「夕飯食べたい。お酒はお腹いっぱいになって、ゆっくり飲みたいから」 「分かった、温めるから待ってろ」  裕二はよっこらせ、の掛け声でゆっくり立ち上がった。おじさんくさい、と笑えば、うるせーよ、と苦笑する。  テーブルにクリームシチューとサラダとトーストにしたバゲットが並べられた。 「わー、美味しそう! いただきます」  両手を合わせてシチューを頬張る。 「すっごく美味しい!」 「市販のルウを使ってんだから、美味いに決まってんだろ」  褒めてるんだから素直に受け取ればいいのに。満更でもない顔してるくせに。  おかわりもして、お腹いっぱいになるまで食べて満足。 「つまみ食える?」 「今は無理。また後で食べる」 「小腹が空いたら言えよ」  テーブルの上を片付けて、酎ハイで乾杯をした。  あまり強くないからチビチビ飲む。  裕二から昨日の合コンの話は出ない。言わないってことは、彼女はできなかったってことかな? 聞きたくないけど気になる。  お酒を喉に流し込んだ。
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