ninemillion rainydays

3/3
前へ
/3ページ
次へ
 あの地震、原発事故。あの時の雨を忘れない。  傘をささなかった僕も幼き息子を濡らすまじと傘さして車まで。  黒い雨を、温い風を。  僕らには共通の敵がいた。  もうおしまいだと思った。  これから生きる子供たち。  まだ生きていたかった僕。  きみはどう思ってたのか。  わからないけれど、きみはすっかり忘れてしまったよう。何年かすれば元通り。けれども僕はあの雨を忘れない。放射能の事は良く知らない。けれども放射能の雨が放射能の海に注ぐ。それでも海の魚はとびきり美味しい。  みんなが雨上がり。  僕だけずっとずぶに濡れて、あの雨この雨思い出す。  きみを忘れたい。世間を忘れたい。  そしたら世間を知るしかない。  女のひとが魅力的なのを思い出したけど、僕には何にも出来ない。  きみに叶わぬ恋よりマシと、けれども彼女、辛そうなんだ。  それでも関係ない。ひょっとして、きみの僕への気持ちと同じかも。  ならば良かった。身の程知れた。  暗い暗い、夜の雨に、とけてなくならせてはくれないだろうか。  笑えるね。  ほんとうにぜつぼうしてしまったんだ。  いきていたく、なくなった。  雨さん、サイナラだ。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加