第二章

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「何故毅渓を助けた?」 「見ていられなかったのです。あれ程の幼い子が……」 「お前が四つの時も同じ事をしていただろう」 「……」  月霜は目を側めた。  自分が四つの時に同じ事をしていたからこそ、その辛さが身に染みて分かる。  だからこそ、毅渓に同じ思いをして欲しくないという一心で助けた。 「自分の姿に重ねたのか」 「──はい」 「だからお前はまだ甘いのだ。情に流されるな」  煥峯の視線はより険しくなった。  月霜は苦い表情をする。  甘いと言われる理由は、月霜には良く分かっていた。 「任務では、絶対に情に流されません」  煥峯は月霜から書物に視線を移しながら、だと良いがなと、ため息混じりに呟いた。  師匠からして、自分はまだ未熟なのだと、月霜は痛感した。
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