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「依頼を受けたいです」
「無理だ。夜襲でもかけられてみろ。真っ先に命を落とすぞ」
それは月霜も分かっていた。
だが、月霜は煥峯の所に弟子入りして十二年。
煥峯から剣を教わった年月が一番長く、剣術も見事なものある。
それに加えて、月霜はそろそろ独り立ちをしなければならない。
依頼を成し遂げて初めて独り立ちを許される為、月霜は何としても依頼を受けたかった。
「──何とか、なりませんか」
「ならないな。お前に護衛は無理だ」
即座に否定する煥峯に月霜は項垂れる。
「そう……ですか。独り立ちも、まだまだ先になりますね」
煥峯はため息をつく。
「剣士が簡単に心情を顔に出すな。弱点を相手に教えている様な物だぞ」
「すみません……」
「それに、独り立ちは出来ないと一言でも言ったか?」
月霜はばっと顔をあげた。
「依頼をくれるんですか」
その様子を見て煥峯は苦笑する。
「ああ、護衛では無いがな」
「構いません。どんな依頼でも引き受けます」
「それは助かる」
「して、雇い主はどちらに?」
「俺だ」
月霜は首を傾げる。
が、少し考えた後、表情が険しくなった。
「ひょっとして、いつまで経っても独り立ち出来そうにない私を憐れに思ったから雇ってくれたのですか?私に簡単な任務を与えて独り立ちさせようと……」
そんな独り立ちに何の意味があるのだろうと月霜は続く。
「お情けなら無用です。簡単な任務で独り立ちするくらいなら破門になった方がまだ……」
煥峯は大きなため息をつく。
「誰が簡単な任務だと言った」
月霜は言葉に詰まる。
違うのですかとでも言いたげな顔である。
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