第三章

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「さて、そろそろ出発しましょうか。お茶、ご馳走様でした」  あれこれと思い悩む月霜に向かって一笑すると、如鼠は手際よく木の器を重ねて持ち上げ、川の方へ向かった。  手際よく片付けていくところからして、相当旅に慣れていることが分かる。  それこそ、月霜や瑾容が想像すらつかないほどに。 「悔しいけど、如鼠がいれば確かに色々と(はかど)りそうよね」  仕事を奪われた瑾容は少し面白くなさそうに呟く。  器量良しと持て囃される瑾容からすれば、確かに面白くないのかも知れない。  月霜は黙って苦笑を浮かべた。  日はまだ高いが、冬の日没は早い。  三人はまとめた荷物を馬の背に積むと無言で馬に跨ぎ、道を急いだ。  先頭を行く如鼠。その背後に瑾容、月霜と続く。  ──どうしようか。  月霜は目を細めて先行く男を険しい目で見詰める。  今のところ、敵意は感じられない。味方ではないとは言い切れない。  だが、やはり籠絡された様な感じは拭えないのだ。  如鼠を連れていくと判断したのは月霜と瑾容。  だが、そうせざるを得ない状況に持ち込んだのは間違いなく如鼠。  これら全てが如鼠の謀計ではない事はどうして言い切れようか……。  白い息が月霜の口から漏れる。 「──師匠といい、如鼠といい、何故私の周りには考えが読めない奴しかいないんだ?」
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