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……そんなのは、私もわかっているけど。
帝国を守る為の力には身分など存在はしない。
しかし、根強い身分差別や偏見は市民階級の子どもたちの心を大きく傷つけてきた。ガーナもその一人である。
……でも、親友だもの。良いじゃない。学生は身分とか関係のない友人関係を築くものだって兄さんも言ってたし。
結局は、身分制度から抜け出せない。
国の為に命を差し出し、得られるものは犠牲だけだった。
自らの意思を貫き、その結果が帝国を守る為の生贄になることである。それが美徳とするのは、帝国民の根本に始祖信仰が根付いているからなのかもしれない。
「ねえねえ! まだまだ遊ぼうよ! ちょっとくらい豪遊したって怒られないでしょ? お金をいっぱい使おうよ!」
それを学園で学びながらも、ガーナは笑っていた。
――もっと、酷い差別を受け、笑っている人の存在を知っている。
だからこそ、弱音を吐くわけにはいかなかった。
「ええ、勿論ですわ。……豪遊は祖国へ迷惑がかかるのでいたしませんけれど」
「いやーん。頭が固いのね! 少しの豪遊で経済が傾くなら、帝国はとっくに亡国よ! あんなにバカみたいにお金を使ってドレスを着ている貴族なんて飢えて死んでしまっているわよ。そんな人を聞いたことがないもの。だからお金をたくさん使っても大丈夫よ!」
「亡国なんて不吉な言葉を口にするものではありませんわ。不敬罪に処されますわよ。ガーナちゃん、あなたは軍に目を付けられているのでしょう? なにが切っ掛けになるかわかりませんわよ」
ライラは心配をしているのだろう。
それに対し、ガーナはいつも通り笑っていた。
「いやーん! ライラが怒ったわ! こわーい!」
「こら! ちゃんと話を聞きなさい!」
本来ならば、隣国の第二王女という高貴な身分を持つライラが、堂々と散策や買い物をするのには、色々と面倒な手続きを交わしたり護衛をつけたりしなければならない。
「フリアグネット魔法学園には、帝国が誇る古い時代の防御魔術が施されているんですもの! 魔法じゃなくて魔術よ? 今ではあの始祖たちしか使えないって噂のやばい力で出来てるのよ?」
その手続きをせずとも、こうして自由に行動する事が許されているのは絶対安全を誇る設備があるからである。
「だから、亡国なんて不吉な言葉もブラックジョークとして受け入れられるわ」
それは常に生徒たちを監視しているともとれる設備だった。
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