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「予言は出来ないわ。そういうのはまったく当たらないのよ!」
まるで神様に嫌われているかのようだと付け加える。
「兄さんは予言の才に溢れているのにね」
今度は道化師のように笑ってみせた。
荷物を振り回し、軽い足取りで動き回る。
「私に予言の才能さえあれば、帝国は戦争に怯えない日々が続くと言うのにね! 始祖様ももったいないことをすると思わない?」
その言葉に同調する者はいない。
「兄さんじゃなくて、私を選ぶべきだったのよ」
それを知っているからこそ、ガーナは笑ってみせた。
「そしたら、私が帝国を護ってあげられたのに残念だわ」
ガーナは、露骨に肩を落として残念がる。
ライドローズ帝国の情勢は非常に危うい。
隣国であるヴァイス魔道国連邦との休戦条約を結んでいるものの、それが、どのような切っ掛けで破棄されるか分からないのだ。
明日にも戦争が起きてもおかしくはない。
「私は帝国の仕組みに詳しくはありませんが、そのような存在ではなくてなによりだと思いますわよ。神様として崇められるなんて人間の生き方ではありませんわ」
それは帝国人ではないからこその言葉だ。
「うふふ。帝国に対して批判的ね。素敵だわ」
ガーナはライラの言葉を肯定も否定もしない。
「そういうところも好きよ。ライラ。ライラだけだもの。私の言いたいことをわかってくれるのは!」
戦争を望まない者もいる。
帝国の仕組みを疑問視する者もいる。
それを口に出してしまえないのは、身体に刻み込まれた恐怖心によるものだろうか。
「ええ。もちろんですわ。そのような恐ろしいことを言葉にしないでくださいね。ガーナちゃん。私も好きで批判するわけではありませんのよ」
ライラの言葉に対し、ガーナは大きく頷いた。
「ふふっ。それよりも、注目を集めるのは、なーんて素敵なのかしら!」
話の流れを変えてしまう。
無理のある変え方だとわかっていながらも、ガーナは当然のように大きな声を出して見せた。
「やっぱし、私は、注目されるべき存在よね! あぁ、なんて罪深いの! ライラの真面目でありがたいお言葉さえも覆してしまう素敵な女性!」
まるで朗読をしているかのようだった。
名女優になった気分なのかもしれない。
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