第二話 ガーナ・ヴァーケルは変わり者の魔女である

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「さすが、私! さすが、ガーナ様! ねえねえ、そこの君もそう思わない? あっ! ちょっと、走って逃げるってどういうことよー!?」  体をくねらせ、自身の思うままに発言をするガーナに対し、ライラは苦笑せざるを得なかった。  露骨なまでに自身を強調させた口調で語る姿は、自分自身に溺れているようにも見える。 「私が始祖様だったら許されないんだからねえ!!」  その裏では、流石は帝国の民と呼ぶべきか。  未成年者でありながらも、帝国の現状を理解し、冷静な判断を下すことが出来るのだ。  当然、親友であると自負しているライラも気づいていた。  気付いていながらも指摘もせず、ふざけた言動を楽しむガーナに合わせて笑っていた。 「ガーナちゃんが暴発を引き起こしそうだからこそ、見られているのだと思いますわよ。前年度の試験結果、皆さまもご存知でしょうから」  十八歳未満の魔法使いや魔女は、特例を除き魔法学園に通うことが義務付けられている。  それは、十八歳未満の子供は心が不安定になりがちであり、魔力を自身の支配下に置き切れず、魔力の暴発という現象を起こしやすいからだ。 「ああああ! 聞こえなーい! 神的天才の私の才能を図ろうとする試験なんて滅びてしまえばいいのよ!」  特に、私立の名門であり絶対安全を謳う学園であるあるからこそ、他国からの留学生や帝国内の名のある貴族たちが多く通う。  全寮制を採用していることも都市として、成立する理由の一つであろう。 「試験なんて大嫌い! 貴族様のお綺麗な文章で書かれたってわからないのよ! もっと、こう、方言を全面的に出した文章を要求するわ! もしくは辞書を使わせてほしい!」 「ガーナちゃん。今年こそは淑女を目指しましょうね。そうすれば自然と言葉は身についてきますわ」 「いやよ! いや! 私は淑女なんてって堅苦しいのは大嫌いなの!」  差別なき帝国、民主主義の帝国。  古代からのやり方を否定し、新たな国家体制を。  そんな目標を掲げている変わり者の皇帝の意志が反映された学園には、多くの政治家や非魔法使いたちも注目している。 「方言だって伝わらなさそうなのは使ってないんだからいいじゃない! そんなのはお貴族様がやっていればいいじゃないの! ばかみたい!」  新しく吹き込まれる風は、帝国にとってどのような結果になるのだろうか。  それを見極める為だけに注目を集められている。
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