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第三話 根拠のないガーナの勘とライラの願い
「え? ――えーっと、二回目でしょうか」
不安げな声を上げる。
前触れの無い質問に対して、ライラは首を傾げながら答えた。
……答え方も可愛らしいって。ほんと、私の親友は素敵よね。
心の中で褒めてしまう。
「うふふっ、ハズレ! 五回目よ」
「あら。そうでしたかしら? ……でもね、ガーナちゃん。とても大切なことですわよ。何回も話をしたでしょう?」
ライラの言葉に対し、ガーナは反射的に顔を背ける。
「そうなの? 私、なーにも知らないわ!」
無理に誤魔化そうとしているわけではない。
ただ、都合の悪いことは聞かなかったことにしてしまいたいだけだった。
「ええ。そうなのですよ。私の国の考え方にはなりますが、私欲に溺れることは穢れを背負うことなのです。穢れを背負えば、いずれは罪となり、それは国と民を――。って、聞いていますか?」
ライラは戸惑ったように言う。
……真面目な話と優しい口調が王女様とは思えないのよね。
両腕に紙袋をかけているその姿は、何とも市民として定着してしまいそうな程に違和感のない姿にもみえてくる。
ガーナに比べれば荷物は少ないが、一般的に見ればだいぶ買い込んでいる。
……うふふっ、謙虚なところも好きよ。
戸惑うライラに身体を当てる。
少しだけ体重を掛けるようにして、斜めになる。
そんな突然の行動に、首を傾げているライラは文句の一つも言わなかった。
「えへへ」
ガーナは、緩んだ笑みを浮かべた。
その笑みは見ている人を安心させる不思議な力がある。
「優しいわね。ライラ。そういうところも大好きよ」
貴族ばかりの魔法学園に通っていながらも、ガーナが嫌がらせを受けていない要因の一つとなっているだろう。
「うふふっ、真面目だねー。そこがライラの良いところだけど」
「ありがとうございます。真面目に生きることは大切なことですわ」
「うん。知ってるよ。でも、私にはちょっと重すぎる考えだわ」
ライラはアクアライン王国の第二王女として生まれた。
帝国と同盟を結んでいるとはいえ、アクアライン王国は小国だ。
同盟が破棄され、戦争が勃発すれば一か月以内に陥落することだろう。
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