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そうすれば、なにもかも忘れたまま、生涯を終えるのだろう。
それはそれで幸せなのかもしれない。
……助けなきゃ。約束をしたもの。
孤独のまま、その命を終わらせる姿を想像する。
胸が痛む。
苦しい感情を追い払うかのように、地面を蹴る。
……私が一緒にいないと。
離れていく紅色の髪を探す。
……約束を守らないと。
なぜかはわからない。
ただ、ガーナは追いかけた。導かれるように必死に走る。
……そうよ。私たちは、いつも、一緒にいたのに。
いつでも、笑っていた人たちの姿が脳裏をよぎる。
姿をはっきりと思い出せたわけではない。
霞みがかったその人たちの中には、確かにいたのだ。
「待ちなさいよ」
常に守られている立場に居た。
半端な力しか持たない“彼女”を守る為にどれくらいの犠牲を払ったことだろうか。何度、大切な仲間たちが犠牲となったことだろうか。
心が叫んでいる。
その記憶こそが真実であるとガーナに語り掛けてくる。
「待ってよ!!」
何度、それを悔やんだことだろうか。
忘れてはならないとなにかが警告を鳴らす。
「私はここにいるのに!!」
得体の知れないものに背中を押されている。
それに気づくこともなく、ガーナは走った。ひたすらに走った。
霞みがかった記憶の先には、大切なことが隠されている気がした。
……“私”は、約束したのよ。守るって。
無意識に紅髪の少女を探す。
彼女を探せば、なにか思い出す気がした。
胸が痛む。頭が痛む。身体中が悲鳴を上げる。
まるで、思い出す事を拒絶しているかのようだった。
痛みで足を止めてしまいそうになる。
頭を抱えて丸まってしまえれば楽になるのだろうか。
……うん、大丈夫。守るよ。その為に、走らなきゃ……!!
痛みを堪えながら走る。
既にライラの存在を忘れていた。
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