第三話 根拠のないガーナの勘とライラの願い 

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 そうすれば、なにもかも忘れたまま、生涯を終えるのだろう。  それはそれで幸せなのかもしれない。  ……助けなきゃ。約束をしたもの。  孤独のまま、その命を終わらせる姿を想像する。  胸が痛む。  苦しい感情を追い払うかのように、地面を蹴る。  ……私が一緒にいないと。  離れていく紅色の髪を探す。  ……約束を守らないと。  なぜかはわからない。  ただ、ガーナは追いかけた。導かれるように必死に走る。  ……そうよ。私たちは、いつも、一緒にいたのに。  いつでも、笑っていた人たちの姿が脳裏をよぎる。  姿をはっきりと思い出せたわけではない。  霞みがかったその人たちの中には、確かにいたのだ。 「待ちなさいよ」  常に守られている立場に居た。  半端な力しか持たない“彼女”を守る為にどれくらいの犠牲を払ったことだろうか。何度、大切な仲間たちが犠牲となったことだろうか。  心が叫んでいる。  その記憶こそが真実であるとガーナに語り掛けてくる。 「待ってよ!!」  何度、それを悔やんだことだろうか。  忘れてはならないとなにかが警告を鳴らす。 「私はここにいるのに!!」  得体の知れないものに背中を押されている。  それに気づくこともなく、ガーナは走った。ひたすらに走った。  霞みがかった記憶の先には、大切なことが隠されている気がした。  ……“私”は、約束したのよ。守るって。  無意識に紅髪の少女を探す。  彼女を探せば、なにか思い出す気がした。  胸が痛む。頭が痛む。身体中が悲鳴を上げる。  まるで、思い出す事を拒絶しているかのようだった。  痛みで足を止めてしまいそうになる。  頭を抱えて丸まってしまえれば楽になるのだろうか。  ……うん、大丈夫。守るよ。その為に、走らなきゃ……!!  痛みを堪えながら走る。  既にライラの存在を忘れていた。
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