第三話 根拠のないガーナの勘とライラの願い 

6/6

9人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ
「ガーナちゃんっ」  身分を気にするライラに対しても、笑顔で手を指し差し出してくれた親友が離れて行ってしまう。  手の届ないところに連れて行かれてしまう。  それは、なによりも恐ろしいことだった。  ……嫌ですわ。あの子を、――ガーナちゃんを失いたくはないのです。  それは、ガーナの死を意味している。  何故だろうか。そんな不安がライラを支配した。  ……どうすれば、良いのでしょうか。  恐怖感に身体が蝕まれる。  この直感を否定することが出来なかった。 「ガーナちゃあああああああん――!!」  もう一度、名を呼んだ。大声を上げた。  手段を選んでいる暇はなかった。  どのようなことをしてでも引き留めなくてはいけない。 「ガーナちゃん!!」  助けを呼ぶかのように叫ぶ。  走り去った唯一無二の親友を引き留める為だけの声は、空しく響き渡る。  誰もがその声には応えない。 「戻ってきてくださいませ!」  傍に居たあの笑顔が美しい少女は振り返らない。 「お願いだから!」  傍に居るだけで世界を救ってしまいそうだった力強い笑い声は、聞こえない。 「いなくならないで!」  振り返ることも応えることもなく、なにかに引きずり込まれるように消えた。 「ガーナちゃん……!!」  それから、ライラは座り込んでしまった。  地面に散らばる荷物をかき集めることもしなかった。  ただ、地面を涙で濡らす。零れ落ちた涙は止まらない。  ……どうすることも、出来ないのでしょうか。  初めて感じた恐怖に身体を震わせる。  ……お願いです、神様。なにも起きないでください。  その場に蹲ることしか出来なかった。  涙を流し続けることしか出来なかった。 「神様。どうか、どうか、私から、ガーナちゃんを奪わないでください……!」  皮肉にも、ライラの願いは届くことがなかった。  それどころか、彼女の直感は間違っていなかった。  それを知るのは、もう少し先の話である。
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加