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「待ってえええええええええええッ――!!」
それは、偶然だった。一瞬、視界に入っただけだった。
ライラの存在すら忘れ、無我夢中で追いかけた。
……やっと、見つけたのよ。
一瞬、視界に収まった綺麗な紅色の髪の少女。
一瞬、血が飛び散る戦場を連想させたそれは美しくも儚い人だった。
……ずっと、探していたのよ。
思い出すだけでも、胸が高鳴る。
不思議と恐怖心は無く、引き寄せられるその少女には懐かしさを感じた。
その人の元へと駆けだすのは、当然だと思えた。
「待ってえええええええっ――!! シャーロット!!」
彼女のことは何一つ知らなかった。
見たのも初めての初めてだった。
けれども、頭の中に彼女の名前であると確信できる言葉が浮かび、気づけば、それを口に出していた。
……“シャーロット”――?
それに驚きを抱きながらも、ガーナは走るのを止めない。
ここで彼女を引き留めなければいけないと、なにかが叫ぶ気がした。
「シャーロット!」
口にしていたのは、この帝国が、純粋な魔法文明を保ったままの軍事国家として長い年月、発展し続けている所以でもある守護神――、始祖と呼ばれている存在である女性の名前だった。
「待ちなさいよ!」
その女性から加護を与えられるようにと願いを込め、名家ではその名が付けられることもある。
だが、目の前の少女はその類いではないだろう。
……もしかしたら、それは本能なのかもしれない。
彼女は本物だ。本物の始祖である。
なにかに引き寄せられるようにして走り出したガーナの眼には迷いはなかった。
ここで呼び止めなくてはならない気がした。
その理由を考える必要もない。
これは本能によるものだ。
そんなことを考えながらも、ガーナは走る。
不思議なことに違和感なく、ガーナの中では綺麗に納まっていた。
「やっと、見つけたわ。シャーロット」
……彼女を見つけたのは、私の運命だったのかも。
彼女は帝国を護る始祖の一人だ。彼女は守護神として崇められる存在だ。
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