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返り血を浴びたかのような真っ赤な髪と眼。
感情が宿っていないかのような冷たい表情。
それは哀しいほどに美しかった。
……だって、私は一目でわかったもの。
呪われているのではないかと揶揄している人々の気持ちも理解できる。
それほどに悍ましい紅色をしていた。
……彼女は人じゃない。
彼女は帝国を危機から救うために、不死鳥の如く、何度も蘇る伝説の存在だ。
……人間ではない別のなにかになってしまっているんだわ。
彼女が身に纏う色は、帝国を死から遠ざけ、敵には災厄を巻き散らすと信じられている。
……それが神様なのかわからないけど。
生きているだけで災厄を振り撒く悪魔のような人物だと恐れられているのも、彼女の恐ろしい功績の数々によるものだろう。
「シャーロット」
名を呼ばれたことに驚いたのだろうか。
ようやく振り返った少女に対してガーナは親しげに声をかける。
「どうしてここにいるの? 貴女はいつだって領地から出てこなかったじゃないの」
まるで昔から知っているかのようだった。
自然と言葉が口から出ていた。
「引きこもりが一人で外に出るなんて普通じゃないわ」
そのことに対してガーナは疑問を抱いていないのだろう。
「お兄様の身になにか起きたのではないでしょうね?」
はたしてガーナの口から出ているのは本当にガーナの言葉だろうか。
まるで別人のように穏やかな声が出ていた。
「どうしたの? どうしてなにも言わないの?」
……私は探していたんだわ。彼女を守る為に。
それは、根拠のない自信だった。
ガーナに対して、名を呼ばれた少女は見定めるかのように眼を細めた。
「なにか言ってくれないと困るわ」
血のようだと感じられる紅色がガーナを見ている。
それを感じながら、ガーナは微笑んだ。
この日を待っていたというかのような穏やかな笑みだ。
「ねえ。応えてよ。シャーロット」
その笑顔は、なにかに憑かれているようだった。
「やっと会えたのに無視をするなんて酷いわ」
普段では想像ができない綺麗な笑顔だった。
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