10人が本棚に入れています
本棚に追加
「みんな、呪いの中で苦しんでいる」
それが正しい予言か、偽りの予言か。
それを審議する余裕もなく、ミカエラは、帝国から災いを遠ざける為に開発していた禁忌に手を出してしまった。
もしかしたら禁忌に手を出す理由を探していたのかもしれない。
「だから、もう、終わらせてしまいましょう」
あの時、マリーが口にした偽りの予言だった。
未来を予知することはマリーには出来なかった。
「最低だって分かっているわ」
それは、偶然だったのだろう。
マリーが口にした予言は的中してしまった。
「陛下の理想郷を壊そうとするなんて、許されることではないもの」
数年後、反旗を翻した同盟国に囲まれ、帝国は滅亡の危機に陥った。
しかし、それを回避してしまった。
「どうしようもないことだったということは、わかっているの」
ミカエラが手を出してしまった禁忌により、帝国は不死の兵を得た。
ミカエラは、大予言者の呪いにより異質な力を持つ少年少女たちを不死の兵へと作り変えた。
「わかっているのよ」
帝国の名を世界に知らしめる最大の脅威であり、大預言者により与えられた帝国を救済する唯一の術だった。
「でも、限界よ」
英雄たちは呪われた。
滅亡するはずだった未来を変えてしまった英雄は人の道を外れてしまった。
「みんなを解放して」
呪われた英雄たちの力は恐ろしいものだった。
絶望的な危機を簡単に引っ繰り返し、帝国に繁栄をもたらした。
「陛下のいない帝国を守るなんて、誰も、望んでいないわ」
それはミカエラの理想郷そのものだったのだろう。
「……陛下」
その欲を知っていながらもマリーは笑ってみせた。
正気ではなかった。愛に溺れた女の末路だった。
「私だけは、帝国の為に生きる価値もないと判断されたのかしら。穢れなき聖女なんて名ばかりのお飾りとして、罪を背負わせてもくれないなんて」
狂ったような笑みを浮かべる。
九百年という長い月日がマリーの心を壊し続けたのだろう。
「貴方が選んだ聖女である私が全てを終わらせてみせるわ」
何度も死しても蘇る。
姿形を変えながらも、記憶も人格も才能も引き継いで転生を果たす。
最初のコメントを投稿しよう!