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 課題作品の展示の前に、私は立っている。たくさんの作品がそれぞれの個性を放ちながらずらっと並んでいる。一年生全員の紙が貼られているから、かなり大規模な展示だ。展示し始めたときはたくさんの人が見に来ていたから、三日経って少し人の波が落ち着いてきたときに足を運んだ。  私の作品は三段ある中の下段にあった。スマホで写真を撮る。初めてのオリジナル作品で他の人と同じ土俵に立てるなんて、なんだか不思議な感覚だ。  黄色いカタバミ、白いドクダミ、青いツユクサ、紫のヒメオドリコソウ。それらが花束になっている。雑草の花束だ。  そして、その下にはシャツを着た人間の身体がある。白いシャツを選んだのは、雑草の人の思惑が入っていない純粋なイメージに沿って、真面目そうなフォーマルなものにしたかったのだ。  さらに、赤黒い鋏が彼のおそらく首であろう部分に差し込まれている。実際には、雑草の花束の茎部分に。これは、雑草を好かない人たちを示している。彼らはその命など一秒も考えず容赦なく刈り取る。  好きなものが人によっては排除の対象であるという虚しさを描きたかった。「雑草の命」と書かれた紙が私の名前と共にその下に貼られている。  正確さしかない私らしく、雑草は今までのスケッチから持ってきたし、鋏はがっつり家にあるものを参考にしたし、人間の体はデフォルメされていないリアルなものだ。  しかし、そういった正確さが、よりこのタイトルを引き立てていると今では思う。これがデフォルメされたものでは、可愛らしくなってしまう。生き生きとした雑草も、鋏の怖さも表現できなかっただろう。  デッサンしかできなかった私の、初めてのフィクションの含まれた作品。それは、私の武器をふんだんに使った作品になった。
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