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魔導師ジーニンはヴァイオレット・ジョージアナ・エリザベス・バリドンの僕だった。
――私には少なくとも忠実な僕がついてきてくれているわ。
私はニッコリとして番号の書かれた紙を魔導師ジーニンに慣れた手つきで渡した。
「バイトのシフトの終わりは13時よ。あとで」
「かしこまりました。ヴァイオレット公爵令嬢様」
恭しく私からファーストフード店のレシートを受け取った魔導師ジーニンは、場違いな紫のマントを翻して、ハンバーガーの受け取り行列の後ろに並んだ。やっと彼の本当の姿が私にも見えたのだ。
私たちは完璧にこの世界に溶け込んで、虎視眈々と復活の狼煙をあげる機会を待っていた。
私は今度こそ失恋の痛みも乗り越えて、彼らに立ち向かえるだろう。必ず私は幸せになるのだ。
いや、誓う。ヴァイオレット公爵令嬢の名にかけて、聖女の名にかけて幸せになろう。私の周りに希望の光がふわりと天から降りてきた。
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