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私の発言に継母のルイーズは目を白黒させたが、アンヌがこの国の王子と結婚するかもしれないという可能性を示されて、うっとりとした表情になった。
――そうよ。アンヌではなく、私が王子と結婚したいのだけれども。
この世界のゴールは王子のヒューと結婚して生き延びるのがゴールとなのだろうか。
――え?そこを疑うの?いや、疑いは持っておき、しばらくはそっと心の中にしまいこんでおこう。
私はそんな事を考えながら、食事の席についた。すぐに祖父のバリドン公爵がやってきた。父もだ。私は懐かしい祖父に会えて嬉しかった。前回の人生では祖父は私が聖女になる直前に亡くなった。
「おはよう、みんな」
「さあ、食べよう」
祖父と父の穏やかな声をきっかけに、ルイーズも席についた。
この世界で私が恋をしたのはヒューだ。ヒューは自分がしたことを反省して、転生した私を追ってきてくれた。あくまで私が死んだ後の時間軸を生きるヒューが追ってきてくれたのだが、私は記憶が蘇った時に、ヒューが嗚咽を漏らしながら後悔している姿とリンクして、嬉しかった。そこまでして追ってきて私が生き延びる運命に変えようとしてくれたことに喜びを感じた。
使用人の誰かが飾ってくれたらしい青紫色の可憐なユキワリソウの花が、食事のテーブルの真ん中に置いてあった。私はその花を見つめながら、私が記憶を取り戻したと、頬を赤らめて喜んだヒューの表情を思い出した。
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