32 容疑者リストの最上位は恋する元婚約者

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 そこまで考えて私は赤面した。18歳で死んだ聖女は、転生した先では苦学生の20歳だった。そこでもやはりヒューに恋をしそうだった。いや、白状すると恋をしていると思う。  じゃあ、はっきりさせよう。このままヒューに問題が見つからなければ、私はヒューと必ず結婚しよう。  ――いいわね?ヴァイオレット?  私は自分に覚悟を決めるように言った。自分をズタボロに傷つけた元カレと結婚するのだ。しかも、私が聖女失格とは言え、彼は私を再起不能なレベルまで傷つけた。彼がいくら魅力的でも婚約破棄を一方的に言われた瞬間とボロボロに傷ついた心の記憶がある。  ――よくないわ、ヴァイオレット。  私の心が迷う。  聖女の候補になったら王子のヒューと出会う。今日、聖女の力を示すわけだから、前回の流れで言うと、明日にはヒューに再会する。私のことを覚えていないヒューに会うのだ。  このやり直しのルールはこうだ。今回は一週間こちらの世界で過ごしたあと、私はスマホに記録された画像データを持って2024年に戻る。私の死後の時間軸のヒューと魔導師ジーニンはそこで待っている。18歳になった時に起きたことは手に負えなかった。不可避の状態で私は死にいたった。今度は名誉を損なわれることなく、犯人の行動を未然に防ぐのだ。  私は今日のアンヌの誕生日会で起きる出来事が騒ぎとなり、王宮に呼ばれて国王にお会いする。聖女候補になるからだ。既に聖女候補だったカトリーヌはこの時すでに20歳。他の聖女候補も18歳を超えていたはずだ。16歳の私は最年少の聖女候補になるのだ。そして、王子であったヒューと王宮で出会うことになる。  この国はまだ貧しい。借金を抱えていたはずだ。民が豊かになる方法をヒューと各地を回って見つけて行ったのは、聖女になったわたしだ。
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