33 ルネ伯爵令嬢マルグリッドの疑惑

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 テーブルに次から次に運ばれてきたのは香辛料が使われている料理だった。バリドン公爵家では、サフラン、胡椒、コリアンダー、生姜、パセリ、バジル、シナモン。ありとあらゆるこの時代に手に入ったと思われる香辛料が使われていた。やはりある程度資金力はあり、血液をサラサラにする効果のあるサフランや、肉の保存に効いて結果的にペスト菌を寄せ付けない胡椒、神経保護効果や抗不安効果、抗けいれん効果のあるコリアンダーなど、医学的には現代でも効果が明確になっている香辛料を手に入れているようだ。  ならば、と私は内心思った。やはり、他の物も手にいれることはできるかもしれない。カカオやコーヒーだ。でも今の私の16歳の年齢だとコーヒーはあまり飲めないと気づいて落胆した。チョコレートを作れる可能性はあるかもしれないと思った。ロンドンのチョコレートハウスは1657年頃だ。コーヒーハウスの出現もその頃だ。バリドン公爵家の香辛料の使いっぷりでは、この様子なら望めば手に入るだろう。  私はホッとした。落ち着いてくると、ヒューが説明しなかった人物をこっそりスマホで写真を撮った。
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