33 ルネ伯爵令嬢マルグリッドの疑惑

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「ヴァイオレット!」  真っ先に走って駆け寄ってきたのは、継母ルイーズと父だった。  ルネ伯爵令嬢のマルグリッドは呆然と私を見ていた。ルネ伯爵家の侍女も、バリドン公爵家の給仕も料理人もあまりの出来事に、驚きのあまり身動きが取れない様子だった。 「まぁ!ヴァイオレットは聖女だわ」  シャーロットおばさまの震えるような声が聞こえた。ゼルニエ公爵夫人のおばさまと、その夫のゼルニエ公爵が真っ青な顔をして私に駆け寄ってきた。 「ヴァイオレットは無事なんだな!?」  あたりに轟くような声で叫んだのは、バリドン公爵の祖父だ。 「はい!ヴァイオレットお嬢様はご無事でございます!」 「お父様、ヴァイオレットは無事です!」  一気にあたりに私の無事を確かめ合う声が溢れた。私はそっと父に抱き抱えられて、「ハリー!医師を呼んでちょうだい!」と叫ぶ継母ルイーズの声で執事のハリーが駆け出すのが分かった。今の動きだけで、継母ルイーズが犯人ではないと断言はできないが、少なくともルイーズは今回の件には無関係に見えた。
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