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だが、マルグリッドは分からない。無邪気な様子で私を心配している顔のマルグリッドをチラリと見ながら、私は父によって屋敷の中に担ぎ込まれた。
ヒューは、もしかすると犯人側ではないのかもしれない。マルグリッドが今の火傷騒ぎを演出した疑惑がやはりある。ヒューはこの場にいなかったし、この時点では私に会ったことすらない。
私はヒューに会いたいと思ってしまった。早くこの世界から抜け出して、元の世界に戻りたい。20歳の苦学生の私は、この世界の恐ろしさに怯みそうだった。
ガラスの馬車はバリドン公爵家には存在するが、あの20歳のバイトをする私が知っている素敵なヒューはここにはいない。
マルグリッドのことをあのヒューと魔導師ジーニンに報告するには、あと5日をこの世界で過ごすのだ。
明日は16歳のヴァイオレットが聖女候補になったとして、サミュエルが御者を務めるガラスの馬車に乗って宮殿に行く。国王に挨拶をする日だ。私に処刑を命じたあの国王だ。
国王が私を処刑する理由は何だったんだろうか。単に虚偽の報告に騙されただけなのだろうか。
会うのが怖い人だ。平常心を保つよう、私は自分に言い聞かせた。
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