34 国王陛下にご挨拶

2/9
前へ
/415ページ
次へ
 バリドン公爵家は大騒ぎになった。とにかくこの日は妹のアンヌの2歳の誕生日会で知り合いの貴族のほとんどが招待されていた。彼らは目にしたものについて口々に意見を述べ合った。  全員の意見が一致したことが、ヴァイオレット公爵令嬢は聖女になり得る力を持つということだ。  私は一度この流れを経験しているので、特に驚きはしなかった。すぐさま宮殿に情報を伝えるためにバリドン公爵家の使いの者が出発した。現在私が手にしているアイテムはスマホのみだ。私はカシャカシャと密かに写真を撮りまくった。  どこかのタイミングでヒントになるアイテムをもっと入手するつもりだ。料理に使われている香辛料から、貴重な絹で仕立てられたシャーロットおばさまのドレスや、貴族のビールと言われる小麦で作られた白ビールまでスマホで写真をこっそり撮った。    私は知っている。その夜遅く、明日宮殿にヴァイオレット公爵令嬢を連れてくるようにと国王からの要請が届くのだ。 「きっと宮殿に明日行くことになるわ。お父様、お母様、準備をしてください」  スマホである程度写真を撮り終えると、そう伝えて自分のベッドで横になった。火傷の跡は跡形もなく消えた。前回の時より治りが早い。私はベッドの中でひたすら国王に会った時になんというかを考えていた。私は18歳で死んだ時のスキルを16歳の体に持っている。  うとうとと寝ていた私は、そっと起こされた。祖父と父と母が私の部屋にアデルと一緒にやってきた。まだ19時ぐらいだろうか。外は真っ暗になっている。
/415ページ

最初のコメントを投稿しよう!

127人が本棚に入れています
本棚に追加