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うだるような暑さの中、やっとバイトが終わった。早朝からのシフトだったので寝不足だ。今にも穴が空きそうなスニーカーを履いて、私は眩しい日差しの中に歩み出た。
ファーストフード店の昼下がり。それなりに人がいる。ちょっとおしゃれな郊外なので、在宅勤務中の会社員に小腹が空いて買いに来たや小さな子を連れた主婦で賑わっている。
日差しが眩しい。
くらっと来そうなのは、日差しだけではない。この暑さだけではない。ドアを開けて外に出ると、下界に君臨したお嬢様並みのお出迎えが待っていた。ボロボロのシャツにジーンズの男性がアスファルトに跪き、隣に黒のタキシードを着こなした男性が跪いている。
「お嬢様、ご無事で何よりです。お車はこちらにご用意しております」
二人がサッと私に手を差し出し、私はどちらの手も無視して歩き出す。
「人目がありますから、外ではやめてくださいっ!」
私は二人に鋭い口調で注意するも、流行りの異世界転生にどっぷりハマって逝ってしまわれたらしい二人の若者の耳には届かない。二人とも三十一歳らしい。私は二十歳だ。
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