34 国王陛下にご挨拶

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 ――ヒューより最上位の容疑者は国王になる。そうだ、みんな気づかなかったけれど、国王が私の失墜を仕組んだ張本人の可能性だってある!  私は初めて気づいたことに恐怖を感じた。背筋が寒くなる思いだった。私を見据えて処刑を言い渡した時の国王の顔は忘れられない。明日、私は平常心で国王に挨拶できるのだろうか。  人間の醜さというものを思い知った今は、対処できなければ聖女失格だと知っている。よく考えるのだ。自分の身を守るために。  国王に会った後、明日はヒューにも出会う。ヒューはこの時すでに21歳のはずだ。16歳の私を見ても興味を持たないはずだ。私たちが恋に落ちるのは、2年後の私が18歳でヒューが24歳の時のヒューだ。婚約したのはヒューが25歳で私が18歳のときだ。  ヒューの力を借りることを早めるべきか。  別世界で20歳の富子が出会ったヒューは、27歳くらいだろうか。31歳とヒューは言っていたが、本当かわからない。31歳よりは若く見えたから。とはいうものの、私が前回の人生で最後の日に宮殿で見たヒューよりは、別世界で再会したヒューはグンと大人びていた。
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