34 国王陛下にご挨拶

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 そういえば、陛下の甥であるアルフレッド王子について、ヒューの情報が無かった。アルフレッド王子は私と一緒に馬車であちこち見て回ったが、本当は何者なのだろう。  それにしても、私は前回の人生では色んな人をよく見ていない。アルフレッドと私は呼んでいたが、彼は栗色の髪にキラキラが輝く茶色の瞳で、時々奇妙な冗談を言う人だった。母が亡くなったお葬式の日、アルフレッドには初めて会ったと記憶している。再会したアルフレッドは、私にはとても優しかった。    一貫してアルフレッドは優しかったが、私は前回の人生で人と深く関わろうとはしなかった。この点は改善しよう。  この週は国王に会った後は、聖女の特別教育機関への招待をもらって、父と一緒に王立修道院を訪問したぐらいだ。その後、家庭教師のパンティエーヴル先生がやってきた。  去年の誕生日に貰った新しい日記帳を取り出して、私は書き始めた。私が6日後に私が去った後の16歳のヴァイオレットの行動指針とするためにだ。ヴァイオレットは今度こそ殺されてはならない。処刑される運命を回避するのだ。  明日はスマホで国王を撮影したいが、そんな隙があるのか私は自信が無かった。ガラスの馬車で走りながら、あちこち撮影しよう。そう思ったら、気分が少し軽くなり、日記を書くのをやめて私は眠りについた。    ――早くヒューに会いたい。  眠りに入る前に、私はそう思った。 ◆◆◆ 「陛下、例の聖女候補でございます」 「名を申しなさい」 「国王陛下、ヴァイオレット・ジョージアナ・エリザベス・バルドンでございます」 「ジーニン、彼女の力を確認しなさい」  魔導師ジーニンが国王陛下に言われて壁際から前に進み出た。私の目の前にきて、じっと私を見つめた。国王陛下の顔を見て震え上がっていた私は魔導師ジーニンの顔を見てようやく人心地がついた。大丈夫だ。
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