34 国王陛下にご挨拶

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「まず、ハンドッヒ山ですが、ダイヤモンド鉱山です。採掘すればダイヤモンドが採れます。それからメーナルンド山からは銀が採掘できます……全体的に三圃式の農業を推し進めるべきですが、こちらの土地は乳牛を飼育する酪農に適しています。……それから交易を盛んにするために、商社を支援すべきです。例えば、今でいうならボルディ商社。今は小さいですが、必ずしや国益につながる交易を成し遂げるでしょう」  私は2年後の聖女の私が実現した未来を知っている。たった2年とはいえ、ヒューと一緒に国を豊かにするために事業を推し進めたのは事実だ。  ヒューがパートナーとなる前に、国王と私が組んだら、私が死に至る未来を変えられるのか。    国王は宰相に記録するように合図をしており、私が話し続ける間、一言も誰も発しなかった。謁見の広間は静まり返り、国王は食い入るように私の話と地図を交互に見ていた。  国王自身も紙とペンをもらって走り書きをしていたぐらいだ。 「よし、明日は早速ハンドッヒ山に採掘のための人を遣わそう。他のこともよく分かった」  私は国王陛下が満足気に微笑んだ瞬間を見逃さなかった。
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