35 ヒューSide

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迂闊(うかつ)過ぎます!」  俺は魔導師ジーニンにポルシェの中で責められていた。  俺たちはショッピングモールのフードコートの地下駐車場にいた。エンジンを切って、運転席から出た。助手席からジーニンも出てきた。他の人にはボロボロのシャツにジーンズ姿に見えるだろうが、俺の目には紫の長いマントを羽織ったジーニンだ。ジーニンは俺より少し年上だ。若くして父上に才能を買われたのはヴァイオレットと同じだ。  いや、ジーニンの本当の年齢は分からない。父も知らなかったから。とにかく俺よりは年上だということだ。  ジーニンと俺は二人ともヴァイオレットが処刑されるのを見た。ジーニンが守ろうとしたが、できなかった。なぜできなかったのかは色々ある。それは過去の話だから置いておいて(なぜなら一番悪いのは俺だからという自負心がある。俺があんな変な噂を鵜呑(うの)みにして頭に血が登って婚約破棄をしなければ、結果は違っていたのかもしれないという後悔だ)、過去ではなく今の俺の行動を責められていた。 「彼のスペックを見ましたか?」  魔導師ジーニンは長い紫のマントを翻して俺の後を追ってきた。俺はスマートキーを車に向けて鍵をかけながら、足早にエレベーターホールに向かった。 「スペック?彼はスキルを持っているのか?」  
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