35 ヒューSide

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 俺はハッとして魔導師ジーニンを振り返った。俺たちが話しているのは、アパートの住人のことだ。ヴァイオレットがこの世界で住んでいる古いアパートの下の階に住んでいる、ヴァイレオットと同じ大学に通う21歳の男子学生のことだ。彼はメガネをかけていて真面目そうで、賢そうだった。それしか印象がない。 「ルックスですよっ!」  魔導師ジーニンは地団駄踏むように俺に言った。俺の鈍さに苛立(いらだ)っているようだ。 「ルックス?」  そんなもの……と俺は思った。俺は人の容貌を気にしたことがない。ヴァイレットしか目に入らない。彼女の美しさは心を打つものがあったが、それより何より彼女の中身を含めた全てを愛していた。だから、裏切られたと思った時は悲しくて胸が痛くてやるせなかった。傷つけられて、世間知らずだった俺は簡単にその噂を信じてしまった。自分の価値を周りがどう狙っているかなんて、気にもしたことがなかったのだ。俺はダメな人間だった。  愛する者を信じられなくてどうするのか。周りがどう自分を利用しようとするのか、よく考えて振る舞えと父には数えきれないほど言われていた。
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