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そんな……せっかくここまできて……やっとヴァイオレットが記憶を取り戻すところまで漕ぎつけて(ここまでが長かった!)、ヴァイオレットがやり直しのために過去に戻ることができたのに……俺は他の人物にヴァイオレットを取られるのか。
いや。
我儘を言って良い立場にない。ヴァイレオットの命が助かればそれが一番だ。
だが、だが。だが……俺は頭を抱えた。
「いやだ。正直に言ってヴァイオレットが他の男性に惹かれたら、落ち込む。目の前でそんな光景は見たくない」
俺は涙ぐんでさえいた。
「しっかりなさい!ヒュー王子!」
魔導師ジーニンは俺に詰め寄った。
「私もこの世界に残るとヴァイオレットお嬢様に言われたら困るのです!」
ジーニンはギラギラした目で俺を見据えた。彼は本気だ。
「あなた様の花嫁になるべくお方です!あなたが婚約破棄さえしなければ!いいですか。ここで、この世界の若者の魅力にあなたは負けてはなりません。あなたにはハンディがある。最初から大幅なマイナスからの勝負となります。なぜなら、あなたは前回ヴァイレオットお嬢様が処刑される流れを作ってしまったからです」
魔導師ジーニンはエレベーターの上に上がるボタンをバシッと押した。
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