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「気を引き締めてください。彼の力も得て、本当の犯人を突き止めるのはいいでしょう。しかし、あなたは彼より魅力ある人物でなければ、ここまで努力した意味がありませんっ!私もヴァイオレットお嬢様がここに残ると言われたら困るのですからっ!」
エレベーターの中には誰も乗っていなかった。俺と魔導時ジーニンはエレベーターに乗り込んだ。
「分かった。気を引き締めるよ」
俺は固く唇を結んでうなずいた。あと一時間でヴァイオレットが戻ってくる。ここの時間と俺たちのいた世界の時間は、進み方が違うのだ。
いつものフードコートでヴァイオレットの帰りを待つことになっていた。彼女は大学の講義があるから、フードコートに戻ってくる手筈になっている。
俺と魔導師ジーニンはいつものソファ席にハンカチーフを置いた。俺のレースの刺繍のついたハンカチーフだ。
――今日は何を食べよう?
俺はすっかりこの世界の魅力に取り憑かれていた。こちらの世界には美味しいものがたくさんあった。
――まずまずチョコレートがたっぷり乗ったふわふわのドーナツから食べよう。今頃、ヴァイレオットは書物が友だった22歳の俺と出会った頃だろうか。俺は体を鍛えるか、書物を読むかの2択のつまらない男だったなぁ。
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