36 王子に結婚の申込

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「君が新しい聖女候補のバリドン公爵家のヴァイオレット嬢かな?」  晴れた日で、春の日差しの中で何もかもが胸弾む輝きを放っているようだった。  私は走るようにして庭園に行った。きっとヒューはそこにいるはずだ。息を切らして走って行くと、東屋のベンチに寝っ転がって本を読んでいるヒューに遭遇した。  長い足を伸ばして気ままに本を読んでいたヒューは、私の姿に驚いた様子だったが、すぐに誰だか分かった様子で私の名前を当てた。やはり輝くような美貌だ。溌剌とした若さと真っ直ぐな瞳が、私が会っていたヒューとは少し違う。自分に迷いが無い。  私の会いたかったヒューの22歳の姿だ。 「そうでございます。聖女候補になったバリドン公爵家の者です」  私は慌ててマナー通りの挨拶をした。 「急いでどこに行くの?」  私は前回の記憶からヒューが庭で本を読んでいると思って、早く会いたくて走ってきたとは言えなかった。 「宮殿の庭には珍しい鳥がいたり、美しい花が咲いているのかなと思いまして」  まさかあなたに会いに来たとは言えない。
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