36 王子に結婚の申込

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 ――そうなのね、会えないのね。えっ?ルネ伯爵の子息と仲がいいとは……それはマルグリッドの兄のことだわ。  マルグリッドの兄とアルフレッド王子は仲がいいという事実を私は初めて知った。私に良くない噂が立ち始めた頃、ヒューではなくアルフレッド王子と私は各地を馬車で回り、その時、勝手に隣国の大臣と引き合わされた。また背後に浮かぶのがルネ伯爵家だ。  ただの偶然だろうか。私が昨日やけどを負いそうになった時もルネ伯爵家の侍女とぶつかった。  私は考え込んだ。ただの偶然と考えるには、私は疑い深くなりすぎていた。私は悲惨な結果を迎えた未来を知っている。とても偶然には思えなかった。  私はすっとヒューに近づいた。彼の耳元でささやいた。 「秘密ですが、あなたは私の夫になる人です。私にはこの国を豊かにできる聖女の力があります。他の聖女候補にも聖女になって頂きますが、私はあなたの妻になります」  ヒューは驚いた表情で私を見て、呆気に取られた様子だった。そして瞳をキラキラさせて笑い始めた。 「君、大胆だね」  私はすまして首を傾げた。もう一度彼の耳元に近づき、そっとささやいた。
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