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「私としてはこれほどのスキルを有する者はこの国にはいない、他国にもいないと自負しております。わたくしは自分でも自身の身を守る必要がございます」
私はキッパリと言い切った。魔導師ジーニンは私の表情をじっと見つめていた。
「王立修道院長、ここは貸し出しましょう。確かにこれほどのスキルの持ち主は私も見たことがございません。我が国としてはバリドン公爵令嬢を守る必要がございます。こちらの香辛料は食糧庫に運びますよ」
魔導師ジーニンは紫のマントを翻して胡椒の大袋を抱えた。ジーニンはそばに控えていたサミュエルに合図をした。サミュエルはコリアンダーの袋を王立修道院の食糧庫に運ぼうと抱えた。私はナツメグと砂糖とサフランの中袋を抱えて、にっこり微笑んで魔導師ジーニンに従って歩き始めた。
「おぉ、私も運びますよ」
王立修道院長は私の手からサフランとナツメグの中袋を受け取った。
「おおーい」
馬車の中で目を覚ましたらしい父が慌てて後ろを追ってきた。
「取引成立ですわね?」
私は父に聞こえないようにそっと王立修道院長にささやいた。
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