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私は20歳の自分に戻ってきた時、目を開けると、フードコートのいつものソファ席に座っていた。
「おかえりなさいませ、ヴァイオレットお嬢様」
「おかえり、ヴァイオレット」
魔導時ジーニンとヒューに微笑まれて私はほっとした。
「やっぱり怖かったわ。ものすごく緊張した」
私は言葉少なに二人に伝えた。講義の時間まであと1時間は猶予があった。私はテキパキと新しく得た情報を伝えた。
「ひどい」
魔導師ジーニンは、私が火傷をする瞬間の動画を見て顔を歪めて憤っていた。
「わざとに見えるな」
ヒューがそう言うと、魔導師ジーニンも小さく頷いた。ルネ伯爵家の話題になり、マルグリッドの兄の話になり、アルフレッド王子とマルグリッドの兄が仲が良いのはヒューも知っていたが、改めて奇妙な偶然だという話になった。処刑される前、私が馬車で一緒に各地を回っていたのはアルフレッド王子だ。マルグリッドの兄と仲が良いという話はアルフレッド王子から一度も聞いたことがなかった。
大学の講義の時間が終わるとファーストフード店のバイトに行った。バイトのシフトを終えて外に出ると、ヒューが迎えに来てくれていた。私は嬉しかった。
そこからがいつもと違った。私の心は何もかも思い出して、ヒューに会いたくて会いたくてたまらない状態だった。婚約破棄を言い渡されて心をズタボロにされたのに、だ。
私はどうかしているのかもしれない。
純斗が報告を待っているかもしれないと気になって躊躇したが、ヒューを独占したい気持ちに負けた。
過去の自分に戻ってみると、余計に今のヒューに会いたくなり、ヒューに誘われるままにヒューのマンションの部屋に来てしまった。ここにくるのは初めてだ。
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