12 ステータスオープン

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「ステータスオープン」  私は小声でお決まりの言葉を言った。恥ずかしい言葉だ。同級生の誰かに聞かれたら、バイト仲間に聞かれたら、羞恥のあまりに逃げ出したいぐらいの言葉だ。誓ってもいい。私はこういったものからは距離を置いて生きている。これはバイトのタスクなのだと自分に言い聞かせて割り切っている。 「聖女でありながら婚約破棄されてしまい、断罪されて処刑されたヴァイオレットお嬢様。ようやくここまで……」  魔導師のジーニンは私を優しい笑顔で見つめたかと思うと、そうつぶやいてポロポロと涙をこぼしておいおいと泣き出した。ヒューは彼の肩を軽く抱きしめて慰めている。31歳同士の慰め合いは奇妙で傍目には美しいとさえ言えるものかもしれない。レアな趣味を互いに尊ぶ同士の繋がりについて、私がとやかく言って良いものでもない。私は下世話な世の中から距離を置く美しいモノを見たと思うことにしている。ヒューは周りが振り返るほどの美男子だ。  ヒューは、ホリが深くて日本人の一般的な感覚で言うと美しいだろう。世界基準で見ても韓国アイドルですら遥かに凌ぐ美しさを持っているとは思う。
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