42 初めて ※

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 私たちは24歳のヒュー王子とその婚約者の18歳のヴァイオレットだった。全てを受け入れたとき、私の脳裏に浮かんだのは、あのどこまでも続く灰色の空と大地だった。私の幸せの頂点の記憶だ。今、それを塗り替える、超える幸せが私を包んだと思う。  あぁっ!あぁっん!あぁっんあぁっ!あぁんっあぁんっあぁんっ!  本当にゆっくり動き、私は胸を弾ませて喘ぎ、悶えた。ヒューはあっという間に達した。私たちは幸せで、私は痛みを伴う達成感に包まれて、ヒューの胸の中にしばらく包まれていた。シーツには血痕がついていた。 「ヒュー、あなたを信じるわ」  私は何もかもさらけ出し、ヒューの肌をそばに感じて、安堵感と彼の色気に胸の底から幸せが湧き上がるのを抑えきれなかった。  ヒューは私にキスをした。私は彼の腕枕の中で天井を見つめてそのまま眠った。初めての経験だった。それはとても幸せな感動を呼ぶ経験だった。    誰が犯人なのか、少し分かった気がした。少なくとも1人はヒューを取られたくない人だ。  この夜、私はヒューの彼女になった。最高の気分だった。  ――神様。前回の人生で出来なかった事にすがる私をお許しください。一人の女性として、どうしてもこの魅力的な男性の胸に飛び込みたかったのです……。  私の初めてをヒューに捧げたのは、あの時の記憶からすると信じがたいことなのかもしれない。
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