12 ステータスオープン

3/10

131人が本棚に入れています
本棚に追加
/415ページ
 魔導師ジーニンはあっさりとした顔立ちの青年ながら、どこはかとなく精悍さが滲み出る風貌だ。つまり、魔導師ジーニン役になりきる彼は只者ではない感は出ている。ボロボロのシャツにジーンズと言う格好ながらだ。  彼らの本名を私は知らない。バイト先のファーストフード店で夜遅くテーブルを拭いている時に「異世界転生バイト役を募集している」と声をかけられて、最初は何かの詐欺かと思った。しかし、彼らの真剣な表情と、iPadで転生設定を説明されて、私はどこか心惹かれてやることにした。1日につき10時間から12時間ぐらい彼らに付き合い、1ヶ月で43万円になる計算に心惹かれた。学費の納付のためだ。家賃と生活費でファーストフード店のバイト代は綺麗に消えた。足りないぐらいだった。それに断罪されたお金持ちのお嬢様というのはありがちな設定で、いかにもに思えたのだ。そういうのなら知っているという感覚だろうか。  私の目の前でおいおいと泣く魔導師ジーニンを慰めるヒューは私を慈しむような瞳で時折見つめた。  そんな最高に素敵な二人を前に、無心でラーメンと餃子を食べる私に周りの人々は時々訝しげな視線を送っている。
/415ページ

最初のコメントを投稿しよう!

131人が本棚に入れています
本棚に追加