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そして、ある夜、舞踏会があると夫に連れられて行った。私はダンスは踊れない。修道院では教えてくれなかった。壁側にいると、仮面を被ったある男性に声をかけられた。夫の姿を目で探したが、夫は丁度どこかの貴族と談笑しているようだった。
「君がメロ子爵の新しい奥方かな?」
仮面の男性は夫より年上だと思うが、スタイルが非常に良かった。高貴な品に溢れていて、私は一瞬でクラっとするような魅力を感じた。夫には感じたことのないときめくような胸の高鳴りのようなものを感じたのだ。
私が男性にそのような甘い媚薬のような高まりを感じたのは初めてだった。
「さようでございます」
私は相手が誰だか分からないままに答えた。
「そうか。ダンスが苦手なのかな?」
「さようでございます。お恥ずかしい限りですわ」
「そんなことはない。私も苦手だから。良かったら、向こうで少し座って話そうか」
男性のカリスマ的な何かが私をうなずかせた。チラッと夫を見ると、夫はまだ他の貴族との談笑に夢中のようだ。
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