12 ステータスオープン

4/10

131人が本棚に入れています
本棚に追加
/415ページ
 そうだ。ボロボロのシャツにジーンズの男性が魔導師ジーニンだ。魔導師ジーニンは先ほどの「ステータスオープン」の私の言葉を聞いて深く頷き、私の頭より少し上の部分を見つめて満足げな表情を浮かべたのだ。彼は少し茶色の瞳を輝かせて私の頭上をひとしきり見つめて微笑んだかと思うと、泣き崩れたという次第だ。  タキシード姿の男性が私の元婚約者というヒューだ。ヒューもやはり私の頭上より少し上の部分(多分、そこには何もない。フードコートの天井と私の頭上の間の何もない空間)を見ていた。  このショッピングモールのフードコートは、大学に近いのでたまに利用する。私は時給1200円の契約の中に含まれていることをタスクとして消化しているだけだが、今日の二人の反応はいつにも増して特異なものだった。  何もないはずの宙を見て、感動に唇をワナワナ震わせて大の大人が泣くのは実に奇妙だ。
/415ページ

最初のコメントを投稿しよう!

131人が本棚に入れています
本棚に追加