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ヒューは私を見つめるなり、床にひざまずいた。
「ヴァイオレット、辺境伯レキュールの灰色の空と灰色の大地を見た日を覚えている?」
ヒューは私にささやいた。
「えぇ、覚えているわ」
私は予感に震えてしまった。手が震える。心臓がドキドキした。
「あの時俺はプロポーズだけした。でも、指輪をちゃんと渡していなかったんだ。だから、今度はちゃんと指輪を渡したい。これは母の形見だ。ヴァイオレット、俺と結婚していただけますか」
私は涙が出そうだった。でも、隣に立つ純斗の怒って最悪だという表情が気になって、躊躇した。
「本当は、辺境のレキュール伯爵領を訪れた時に俺はちゃんと指輪を渡すべきだと思う。それはこれからのやり直しがうまく行けば、きっと君にこの指輪をちゃんと渡すと思う。でも、今、ここで受けってもらえないだろうか。改めて俺と結婚してください」
私はヒューが差し出した指輪を見つめた。涙が勝手に込み上げてきて、私はなんだか泣けてきた。炎の刑で死んだ私は、何もヒューからもらったものを持っていなかった。
私は手を差し出して、ヒューが大きなダイヤが輝く指輪をはめてくれた。
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