44 辺境の地レキュール 考察会

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 ヒューは私を抱きしめて、キスをした。  涙に曇る私の耳に、純斗が喋っている声が気こえた。指輪はずっしりと重く、私は大切にするためにどこかにしまっておこうと思った。 「マルグリッドは結局君を陥れて処刑させて、自分は生き延びて各ヒューの婚約者におさまっていた可能性が高い。16歳のヴァイオレットは、国王に圧倒的な力を示した。戻ったら、ヴァイオレットの状況はかなり改善されているとは思う。でも、逆に心配だ。それほど国王に気に入られてしまえば、嫉妬をより早く買うと思うから。次も16歳だよね?僕も一緒に行こう」  純斗はとんでもないことを喋っていた。自分も私と一緒に異世界に行くという。煌めく指輪と、ヒューの優しい心を知っていた私は、そんなバカなという言葉を純斗に言うのをド忘れてしまっていた。  ――ヴァイオレット、あなた聞いているかしら?  私は過去に無念な思いを抱きながら死んで行った自分に思いを馳せた。もらった指輪は、私が死ぬ前にもらってないものだった。大きなダイヤの指輪だ。  私は今、幸せだ。  私の死後にマルグリッドが婚約してもらった指輪のことは、考えない。  次にマルグリッドに会ったら、容赦しない。聖女の力でも何でも使って二度とやられないようにしよう。
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