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「サミュエル、ルネ伯爵家に行きたいの。馬車を出していただけるかしら?」
私とジョセフは馬小屋にいたサミュエルのところに行き、お願いした。
「ね、サミュエルは僕たちのことを知らないの?」
ジョセフこと純斗は私にそっと聞いてきた。
「知らないのよ。ヒューも魔導師ジーニンも知らないわ。私たちはただ単に過去に記憶を保持したまま戻っているだけで、ヒューと魔導師もサミュエルもこの時は何も知らないわ。未来に起こることも彼らは知らない。知っているのは私とあなただけよ」
私は答えた。純斗はなるほどとうなずいている。
「お嬢様、すぐに準備いたします」
サミュエルはテキパキと馬車を出す準備をしてくれて、あっという間に私と純斗は馬車に乗り込んだ。ヴァイオレットお嬢様の従者として、若者でありながら大人のジョセフとして純斗がついてきてくれるのは心強かった。
馬車の中で私とジョセフは話し合った。
「何が飛び出してくるか分からないぞ。油断は禁物だ。いつでもスキルを発動できるようにしておいてくれ」
ジョセフは私に念押しした。
「分かっているわ」
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