133人が本棚に入れています
本棚に追加
「このようにお持ちになり、呪文を唱えて「わかんないっ!だから上手く行くコツを教えてよっ!」」
言い争うような声が聞こえてきて、侍女はビクッと足を止めた。
「一体、マルグリッドは何をしているのかしら?」
私は怯えて立ち止まった侍女にそっと優しく声をかけた。
「その……スキルを……バリドン公爵令嬢が聖女候補になった日から、マルグリッド様も聖女を目指すとおっしゃいまして学んでいらっしゃるのです」
私は不覚にも、ちょっとマルグリッドの健気な気持ちに心打たれた。
――まあ、努力は一応するのね……。無駄だと思うけど。
私は最後の意地悪な思いは心にしまった。
「ごきげんよう、マルグリッドさま」
私がいきなり姿を現したことで、マルグリッドは丸い頬をますます丸く膨らませて面食らった表情になった。しかし、瞬時に何かを計算したようだ。
「まあ、ヴァイレットさま、わざわざ尋ねてきてくださったの!?」
無邪気な声で私に飛び付かんばかりにやってきた。子犬がじゃれつくような勢いだ。私は前回の人生でこの無邪気なマルグリッドの様子にコロッと騙されて、彼女のことを親友だと思い込んでいた。
最初のコメントを投稿しよう!