12 ステータスオープン

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 つい先程フェラーリを降りて、大学近くのフードコートにやって来た。餃子とラーメンを注文して私が待っていると、いつもの二人がやってきて、私のテーブルに一緒に座った。そこで私は早速タスク消化を始めたというわけだ。 「婚約破棄されて、断罪されて、処刑されたヴァイオレットお嬢様。ようやくここまで……あんな無惨な死を迎えたのにようやくここまで……」  魔導師のジーニンは同じセリフを言ってまた涙ぐんだ。  内心、私はうんざりしている。聞き飽きた。この2ヶ月同じ設定を生きていて、彼らに私は同じセリフを言われ続けている。だが、バイト代は信じがたいほど魅力的なのだ。ファーストフード店以外の他のバイトは辞めて退路を断った。私は迫る学費の納付期限に、異世界転生バイトを全うして応じるしかない。  さっきフェラーリの運転手はショッピングモールの地下駐車場に私を送り届けると声を震わせて謝ってきた。彼の名前はサミュエルだ。 「ヴァイオレットお嬢様。ガラスの馬車で迎えに来れなくて大変申し訳ございませんっ!」 「…………まあいいわ。この馬車も快適だから」  私のことを貧乏人だと馬鹿にする人がいないわけではない。前やっていたバイト先の先輩は私の顔をみかんに例えていじめた。果物のみかんだ。「綺麗すぎて腹が立つから、何か笑っている顔がみかんっぽい」という訳のわからない理由でいじめられた。その先輩は、今の私の状態を見たらなんと言うだろうか。
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