47 さようなら、マルグリッド

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「な……なんか怖いけどヴァイオレット!?」  走ってきたジョセフが恐る恐る私に声をかけた。 「そうよ」  と言ったつもりが奇妙な吠え声が出て自分でもびっくりした。 「擬態を解除しますか?」 「解除します」  私は元の姿にスッと戻り、足で使用人の背中を踏みつけていた。 「お前、俺たちに矢を放ったな?しかも大量にだ。言い逃れできないぞ。お嬢様の能力を見ただろ。お前などひとたまりもなく捻り潰せるぞ」  ジョセフは地面に横たわる使用人にドスの効いた低い声で囁いた。 「ご……ごめんなさいっ!大変申し訳ございませんでしたっ!」  私は聖女は聖女でも以前の聖女ではない。ただ力があって貧しい人に分け与えられるだけ分け与えていた、お人好しの公爵令嬢ではない。一度無惨に殺されて不死鳥のように舞い戻った公爵令嬢だ。しかも別世界で厳しい経済状況下にあって世の中の辛酸を舐めている。  どこの世界に本気で矢を大量に射られてご機嫌でいられる人がいるというのだ。 「命令したのはマルグリッドよね?嘘をつくと容赦しないわ」
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