47 さようなら、マルグリッド

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 私の腹の座った言葉に「ひぇっ!」と奇妙な声をあげた侍女と男はそろそろと歩き始めた。マルグリッドは暴れそうになったので、足を蹴って差し上げた。  伯爵令嬢は人に蹴られたことが無いのだろう。私はヴァイオレットそのままの渾身の力で、マルグリッドの綺麗に整えられた髪の毛を引っ張った。  痛いっ!よしてっ!ごめんなさいってばっ!  マルグリッドは泣き出した。 「まっすぐ歩きなさいっ!」  3人は私の剣幕に恐怖の表情を浮かべて歩き始めた。造園中の泥だらけの沼の前まで来た時、3人はキョトンとした表情を浮かべていた。  お仕置きでここで何をされるのかさっぱり理解できないようだ。あいにく、私は一度殺されている。殺人は嫌いだ。 「あら、こんなところに埃がついていらっしゃいますわっ!」  私はそう言って、ドンっ!とマルグリッドの背中を押した。侍女と男の背中も。  ギャッ!  3人は悲鳴をあげて泥だらけのぬかるみに顔面から落ちた。バタバタして起き上がり、顔や髪の毛について泥を落とそうとあがいている。本当の沼では無いから余裕で歩けはする。3人はゾンビのようにこちらに歩いてきた。
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