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私の名前は三笠富子、20歳。バイト中の名前はヴァイオレット・ジョージアナ・エリザベス・バルドン。ヴァイオレットはバルドン公爵の長女らしいが、策に陥れられて冤罪で18歳で処刑された。聖女だ。転生してニホンの三笠富子20歳になった、らしい。
「ヴァイオレットお嬢様。今月の領地の収支報告です」
ボロボロのシャツを着た男性のジーニンから奇妙な文字が羅列された羊皮紙を渡されて、私はうなずいた。羊皮紙を準備する本気度に敬意を払いたい。この本気度はすごいと心の中で思う。
「葡萄の収穫が順調ですね。領地の皆に励むように伝えてね」
私は頭に浮かんだ言葉を適当に言う。ヴァイオレット公爵令嬢の設定は死守だ。
「ありがとうございます。公爵家の領地の皆がヴァイオレットお嬢様のご無事を喜んでおります」
「そう。ありがとう」
私は膝に置いた古いスマホの画面を確認して時間を確認する。そろそろ…………。
7年前に買ってバッテリーがダメになってしまった古びたスマホは、早く食べ終わって大学に行かないと必須講義に遅れることを示していた。
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